つながるファブリーコミュニティ専門家インタビュー

どう伝える?患者の気持ち、医師の想い

お答えいただいたのは…

中川 直樹 先生

旭川医科大学 内科学講座

循環器・腎臓内科学分野

教授 中川 直樹 先生

Q 診察の時にはどんなことをお話しすればいいでしょうか。

A

軽い症状でも、「これはファブリー病と関係ないかも」と思うようなことでも、気になることがあれば遠慮なく伝えてください。

ファブリー病と長く付き合っている方の中には、症状があることが普通になっていて、「いつもと同じです」「特に変わりありません」とお話しされる方も少なくありません。特に長く診療されている方ほど、そうした会話になってしまう傾向もあります。

しかし、汗をかきにくい、下痢が続いているといった症状は、患者さんご自身にとっては「いつも通り」かもしれませんが、ファブリー病の症状の場合もあります。

また、動悸や胸の痛みも、短時間でおさまると診察時に伝えそびれてしまうこともありますが、安静時の胸の痛みは冠攣縮性狭心症*の可能性もあり、注意が必要です。
「些細なことかもしれない」と思っても、診察の際にはぜひ遠慮なくお話しください。その一言が医師にとって大切な手がかりになることがあります。

*冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう):冠攣縮とは、心臓の表面を走行する比較的太い冠動脈が一時的に異常に収縮した状態であり、この病態によって起こる狭心症を冠攣縮性狭心症という

Q 診療の時、先生はどんな風にお話しされますか?

A

誰に対してもまずはしっかりお話を聞くこと(傾聴)を大切にしています。

慢性的な症状がある方は我慢強い方も多く、長くお付き合いがある患者さんほど「いつも通り」とおっしゃることもあります。しかし、よくよく聞いてみると「言われてみれば、、、」とお話しされる言葉の中にあるサインを見逃さないようにしています。

ファブリー病の治療は症状や臓器障害などが劇的に良くなるというものではありません。
患者さんご自身も自覚症状にあまり変化を感じにくいかもしれません。
診療では、定期的な検査(レントゲン、心電図、エコー、採血など)を通じて、変化を一緒に確認することで、治療の効果を実感いただけるように工夫しています。

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Q 治療法は自分の生活スタイルに合わせて選ぶことができるのでしょうか?

A

治療法は患者さん一人ひとりの生活や状況に応じて、医師と相談しながら選ぶことができます。

ファブリー病の治療には、2週間に1回の点滴治療と、2日に1回服用する経口治療の選択肢があります。
経口治療は、特定の遺伝子の変化がある方が対象となるため、治療開始前には確認が必要です。
治療法を選ぶ際には、お仕事やご家庭の状況、通院のしやすさなど、日常生活とのバランスを考慮することが大切です。

たとえば、北海道のように医療機関が広い地域に点在している場合は、通院にかかる時間や頻度も重要な要素となります。
どの治療法にもそれぞれの特徴がありますので、医師とよく相談しながら、ご自身にとって無理なく続けられる方法を一緒に考えることが大切です。

Q 家族や親族にファブリー病のことをどのように伝えればよいでしょうか?

A

無理のない範囲でできることろから始めてみることが大切です。

「家族や親族にどう伝えたらいいかわからない」というお声はよく聞かれます。
そういうときは、無理に詳しく説明しようとしなくても大丈夫です。

「遺伝の関係であなたも可能性があるかもしれない」と伝えるだけでも十分ですし、最近ではインターネットで調べる方も増えているので、「ファブリー病」というキーワードを伝えることで、相手が自分で調べて受診につながるケースもあると思います。

ご家族への伝え方や検査のタイミングについては、医師や認定遺伝カウンセラーと相談しながら、少しずつ進めることもできます。ひとりで抱え込まずに医療者と一緒に考えていきましょう。

また、親戚から病院に行った方がいいよと言われても、「自分は違うかもしれない」「今まで特に問題なかったし、今さら病院に行かなくても」と感じて、受診をためらう方もいらっしゃいます。

これまでの経験では、親族の中で治療に前向きな方がいたことがきっかけになったり、若い方が自分の子どもにも関係するかもしれないと考えて受診されるケースもありました。
今は治療法がある時代なので、「診断がついたら治療を始められる」ということを前向きに捉えていただければ
と思います。

最後に先生からメッセージをお願いします

中川先生

中川先生

ファブリー病は、まだ一般の人にはあまり知られていない希少疾患ですが、医学の進歩によって治療法も進んできています。
今では複数の治療法があり、今後もさらにいい薬が出来てくるかもしれません。
私は「治療しながら前向きに生活しましょう。」とお伝えしています。
不安なことがあれば、ひとりで抱え込まずに、ぜひ医療者に相談してください。