つながるファブリーコミュニティ専門家インタビュー

ファブリー病の早期診断の重要性

お答えいただいたのは…

Q ファブリー病はどうやって診断されるのですか

A

酵素活性の測定や遺伝子検査によって診断されます。

多くの場合、診察した医師がファブリー病を疑うことがきっかけとなります。
診断の流れは男性と女性で大きく異なり、男性では酵素活性の測定が一般的な方法とされています1)。一方、女性の場合は酵素活性からは診断が難しく、ファブリー病であっても酵素活性の測定の結果が正常という場合も珍しくありません。その場合には遺伝子検査を行いますが、ファブリー病の疑いがある方全員に受けていただくことは費用などの面でも難しいので、遺伝子検査の対象をどういう方に絞っていくかが重要となります。遺伝子検査を行うかどうかの手がかりとしては、ファブリー病に特徴的な所見のうち、女性でも比較的出やすい症状、例えば、目の角膜混濁や尿中のマルベリー小体、不整脈や心肥大などの心臓の症状を見つけることなどが大切です。

Q 検査は早く受けたほうがいいですか

A

早く診断を受け、治療を始めることが大切です。

ファブリー病には進行を抑える治療法、酵素補充療法とシャペロン療法(薬理学的シャペロン療法ともいう)があります1)。しかし、始める時期が遅いと効果が得られにくくなります
心不全や腎機能低下はある程度症状が進行してしまうと、治療を始めても悪くなるのを止めることはできないといわれています。また、症状が進んでいても、その他の症状に対して治療は有効だと考えられています。できるだけ早く診断を受け、治療を始めることが大切です。

A

適切な対症療法を行うためにも診断が重要です。

患者さんの中には、痛みや消化器症状、汗をかきにくいといったQOL(生活の質)を下げるような症状が強く出る方もいます。診断がつくことでそれらの症状を軽くするための治療を受けることができます。例えば、ファブリー病の痛みに対しては一般的に処方される痛み止めが効かないことがありますが、適した薬を使用すると痛みが軽くなる方も多いです。

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Q 症状はないけれどファブリー病と診断された場合、いつから治療を始めたらいいですか

A

遺伝子の変化(遺伝子変異)を知ることで、治療を始める時期を予測できることがあるので、主治医と相談しましょう。

ご家族にファブリー病の方がいる場合や、新生児スクリーニング検査などによって、症状が出ていなくてもファブリー病と診断されることがあります。
精密検査などによってファブリー病の病型や遺伝子の変化(遺伝子変異)がわかると、いつごろ、どのように症状が出てくるのか予測が立てられる場合があります。予測は確実ではありませんので、定期的に検査を受けて確認することが重要です。治療を始める時期については、例えば学校に入る前に尿検査、思春期頃からは心電図と心エコーの検査も始めるなど、節目節目で必要な検査を行って症状の現れ方を確認しながら、主治医と相談していくとよいでしょう。

Q 新生児スクリーニング検査とは何ですか

A

赤ちゃんの血液を調べて先天性代謝異常症などを見つけるための検査です。

一般的な新生児スクリーニング検査は、赤ちゃんの先天性代謝異常症など(先天性代謝異常症と先天性甲状腺機能低下症および先天性副腎過形成症)を見つけるための検査です。生後4日から6日の赤ちゃんからほんの少し血液をろ紙にとり、このろ紙血に含まれるアミノ酸などの物質を分析します。
現在では、ほぼ100%の赤ちゃんが検査を受けています。

Q ファブリー病の新生児スクリーニング検査はどのように行うのですか

A

ほんの少しの血液で酵素活性の測定を行います。

一般的な新生児スクリーニング検査のために赤ちゃんから採取したろ紙血を活用して、ファブリー病かどうかを調べる酵素活性の測定を行います。追加の採血はありません。
女の子の場合は、酵素活性の測定の結果では見つからないことがあるので注意が必要です。
適切な時期に治療を開始するためにも、生まれたときに検査で病気を知り、体質のひとつとして把握して、いずれ症状が出てくる可能性を知っておくことは、患者さんご自身にとっても有益な情報となり得るでしょう。

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ファブリー病が疑われる方やご家族へのメッセージをお願いします

中村先生

中村先生

ファブリー病は、病気に気づき診断に至ることが難しい病気です。ご家族の中で痛みがあったり、汗をかきにくかったりする方がいらっしゃると、みんながそうだからと当たり前に思ってしまうこともあるかもしれません。しかし、そういった症状は「当たり前」ではないことに気づいていただき、ファブリー病を疑う症状が出たときにきちんと診断につながるように、受診する、検査を受けるといった行動をとることが大切です
現在、早期診断や遺伝カウンセリングをはじめとして、ファブリー病に関したいろいろなしくみが整ってきています。ぜひ専門の診療を受けていただいて、早く診断がつき適切な治療に入れるようになっていただけたらいいなと思っています。

参考文献

  • 1)ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会 編. ファブリー病診断治療ハンドブック改訂第3版:イーエヌメディックス, 2018

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